スマホのバッテリー長持ち

    スマホのバッテリーを長持ちさせるには、80%から20%の間で使用するのが良く、最もいけないのはバッテリーが100%になっても充電しつづけることだと多くのサイトが書いています。

また、電源アダプターをつないだままスマホを使用する「ながら使用」もいけない。バッテリーが100%になったらアダプターをはずすのが基本だと書いています。しかし、本当にそうでしょうか。

 

バッテリーは使えば劣化しますが、使わなければ劣化しないのではないでしょうか。

ノートPCの場合、普段はAC電源を使い、持ち運びの時だけバッテリーを使います。なるべくAC電源を使えば、バッテリーは長持ちします。

スマホのバッテリーも使わなければ劣化は僅かです。スマホの場合も、できるだけ電源に接続して、バッテリーを使わないようにすれば長持ちするのではないでしょうか。

 

バッテリー長持ちアプリ

アンドロイドスマホに、評判の良いバッテリー長持ちアプリをいくつかインストールして試してみました。
その中で便利だったのが、「バッテリー最適化ガード」でワンタッチでスマホの消費電力を最小にしてくれます。「知的省エネモード」に設定して、バッテリーがどのくらいの時間持つか調べてみました。

 

f:id:rozenhaven7:20211128110809j:plain

 

上のグラフで -0.8 という数字は、バッテリーが1時間あたりの消費率が0.8%だったという意味です。2時間おきに、スマホの電源を入れてバッテリーパーセントをグラフにしました。

4日目と5日目の消費レートが-0.5、-0.4と半減していますが、これは「ハイグレード省エネモード」に設定してスリープ時のバッテリー消費を最小にした結果です。このモードではWiFi、モバイル通信、BlueToothGPSが使えなくなります。

この実験結果から、消費レートが-0.4%のとき、バッテリーを80%から20%まで使用して6日間保つ計算です。

この結果をバッテリー寿命に換算すると、300サイクルとして5年間保つ計算になります。スマホの電池は使わなければ、かなり長持ちするのです。

それにしても、6日ごとに充電しなければならないのでは面倒です。

 

充電ケーブルの挿しっぱなし

    多くのサイトが充電のしっぱなしがいけないと書いていますが、その中でただ1つ、ANKERのサポートサイトだけがつぎのように書いています。

「最新のスマートフォンタブレットは随分と賢くなりました。最新のモバイル機器には、過充電を防ぐために100%まで充電されると自動的に給電が止まるよう保護回路が搭載されています。そのため、充電ケーブルを挿したままでもバッテリーへの影響はほぼありません。そして満充電になった後は、微量な電流を流し続け、常に満充電の状態をキープできるように設計されています。また、モバイル機器によっては充電が80%まで達すると電流を弱めバッテリーへの負荷を減らす機能なども存在しています。」とのことです。

私はこの説明の方が正しいように思います。そこで、調べてみました。

 

保護回路

    リチウムは化学反応の激しい物質で、運用を誤ると発火の危険性があります。そのため、リチウムイオン電池は保護回路が法的に義務づけられています。

保護回路は高精度の充電コントローラーで、バッテリーが4.10Vになるまでは定電流で充電し、その後は電流を低減していって電流が1/10以下になると充電を終了します。

 

f:id:rozenhaven7:20211128111221j:plain

保護回路

上図は、ASUS ノートPCをフル充電したときの様子です。このグラフでは、充電容量が80%を超えたあたりから充電が減り始め、99%から100%までは30分もかかっています。

このような精度の高いコントロールが保護回路で行われています。パソコンやスマホのバッテリー節約充電コントロールでは、このような精度の制御ができません。

Surface のバッテリー制限モード

Microsoft のバッテリー制限モードは、デバイスを長い時間接続し続ける必要があるユーザーが使用する機能です。このモードではバッテリーの充電容量が 50% に制限され、バッテリーの寿命が長くなると説明されています。

そこで、Surface Go2をKIOSKモードにして、充電の様子を調べてみました。

容量20%から充電を開始すると、66%/時の充電率で充電が始まり、約15分で50%に達しました。

バッテリーが50%になると、充電電流が停止し、その後は、CPUにいくら重い負荷をかけてもバッテリー容量に変化が起こりません。電源コネクターを外さないかぎり、バッテリーが消費されることがありません。

f:id:rozenhaven7:20211128111811j:plain

KIOSK モード

KIOSKモードでは、電池が消費しないので劣化が最小限に抑えられます。電源に接続しっぱなしですが、充電電流が極小なので熱を持つことがありません。

 

f:id:rozenhaven7:20211128111951j:plain

KIOSK モードでバッテリー消費する

KIOSKモードで電源コネクターをはずすと、スリープ状態で1時間に0.8%くらいの割合でバッテリーが低下、スクリーンを開くと10~16%くらいの割合でバッテリーが低下します。

KIOSKモードは、電源つなぎっぱなしで使用するモードで、この方式ではバッテリーが最も長持ちします。

 

放電深度

バッテリーの放電深度がバッテリー劣化に対して最も大きな影響を与えます。Battery Univercityが、放電深度と劣化の関係をテストしています。

 

f:id:rozenhaven7:20211128112617j:plain

放電深度と容量低下

この実験で次のことがわかります。

75%から10%までの間でバッテリーを使用したとき、最も劣化が少なく容量低下が10%でした。

劣化が最も大きかったのは、100%から75%の放電深度で、28%の容量低下でした。

意外なのは、100%からの深度60%と、85%からの深度60%の運用でほとんど差がないことです。我が国では100%まで充電すると劣化が大きくなるとされますが、ここでは差がなかったようです。

また、我が国で最も良いとされる85%から25%までの放電深度も、実は推奨されるほどでもないようです。

さらに、バッテリーサイクルを有効に利用するためには、100%から0%まで、放電深度を大きくする方が少ないと説明する人がいますが、これが最悪でした。

What Can the User Do?

ユーザーにできること

と題して Battery Universityがつぎのようにまとめています。

リチウムイオン電池の寿命は、サイクル劣化のほかに環境条件によっても影響を受けます。バッテリーにとっての最悪の状態は、フル充電のバッテリーを高温に保つことす。
逆に、バッテリーを低い電圧で充電するとバッテリー寿命を延ばすことができます。

ノートPCの場合、充電電圧を下げて寿命を延長することができます。たとえば、バッテリーを80%充電で運用するロングライフモードを備えているパソコンの場合などは、これを使用するとバッテリー寿命を延ばすことができます。

「使用していないときのノートPCはAC電源を切断する必要がありますか?」という質問が多いのですが、通常の状況では、必要ありません。なぜなら、バッテリーがフル充電になると充電が停止しますし、その後の充電は電圧が低下したときにのみトッピング充電が起こります。ほとんどのユーザーはAC電源を取り外しませんが、そのやり方で良いのです。

ノートPCはなるべく冷たい状態で使用すると、バッテリーの寿命を延ばし、内部部品を保護することになります。
リチウムイオン電池の寿命のためには、1時間以内の完全充電を謳う超高速充電器などは避けてください。

 

このまとめの最初の部分に書かれている「バッテリーにとっての最悪の状態は、フル充電のバッテリーを高温に保つことです」という言葉は誤解を招きやすい言葉です。

この文章はバッテリーが100%になったら電源をはずさないといけないとと言っているのではありません。ここで言っているのは、バッテリー保管は充電容量と温度が大切で、100%で保管すると50%のときよりも5倍も劣化を早め、高温度で保管するとさらに劣化を進めますと言っています。

これは、我が国でよく言われるようなバッテリーが100%になったら電源を切れと言っているのではありません。その証拠に後半部分で、ノートPCの電源は切断する必要がありません。ほとんどのユーザーはAC電源を取り外しませんが、そのやり方で良いのですと書かれています。

 

結論として、最近のスマホやパソコンのバッテリーには既定値でやや高めの充電モードが設定されているので、ご使用のデバイスの充電モードをチェックして、もしも、制限モードがあればそれを使いましょう。もしもなくても、電源をつないだままにしてかまわないというのが、Battery Univercityの結論なのです。


わかったこと

ベストの方法は、バッテリーが着脱式であれば、とりはずして冷蔵庫で保管することです。そうすれば10年以上は持つはずです。
着脱式でない場合は、50%または60%の充電モードで充電します。常時電源に接続してもバッテリーをなるべく使わないようにすれば、10年は持つはずです。
制限モードがないデバイスでも、100%トッピング充電だけなら7~8年は持つと思います。

バッテリーが100%になったら、充電器を必ず外しなさいなどというサイトの説明にしたがっていたら、サイクル劣化が確実に進みます。
スマホでもパソコンでも、スリープ状態で5年ほどでバッテリーサイクルが終わってしまいます。
さらに、バッテリーでスマホを動作させると、スリープ時の10倍以上の電力を使うので、バッテリーサイクルが早まります。
それではどうすれば良いでしょうか。それは、電源につないだままにして、バッテリーをなるべく消費させなければよいのです。
どうしても使わなければならないときにだけ、バッテリー消費電力を極力小さくして使用します。そのためには、次の設定をします。

・スリープまでの時間を短くします。
Windowsの個人設定で「ダークテーマ」を選びます。
・スクリーンの明るさを低くします。
・低残量バッテリの既定値が6%なので、25%にします。
・バッテリー切れの既定値が3%なので、15%にします。
・省電源移行レベルの既定値が4%なので、25%にします。
・不要なアプリをできるだけ停止します。

このようすると、バッテリーサイクルが伸びて、バッテリー寿命だけでなく、液晶スクリーンやCPU、内部パーツ、パソコン全体の寿命を確実に伸ばせます。

 

ダウンロード

ここで使用したバッテリーのモニター アプリを無償提供します。
このアプリは、マイクロソフトが公開している  GetSystemPowerStatus を用いて、リチウムイオン電池のパーセントとその変化率をグラフ化するアプリです。常駐なしで動作しますし、常駐させることもできます。

http://www6.plala.or.jp/yamaski/soft/battchecker_1.0.zip